この記事ではキャリアプラトーについて詳しく取り上げます。キャリアプラトーとはそもそも何なのか?どのような問題が起こり、その原因は何なのか?についてご案内し、その後に適切な対処法をご案内することで、キャリアプラトーに陥った人が早期にリカバリーできるお手伝いをいたします。
キャリアプラトーとは?その定義と影響について解説します
キャリアプラトーとは、昇進や昇格といったキャリアの成長が停滞している状態を指す言葉です。
プラトーという言葉は、元々は地形における高原や台地といった意味を持っています。高原までは上り坂ですが、高原に到達するとその場所は平らで変化の状態となることから、この点をキャリアが停滞した状態と重ねることで、キャリアプラトーという言葉の由来となっています。
キャリアプラトーは、主に40代付近の中堅層~シニア層でとくに起こりやすいと言われています。これは仕事のスキルや経験が一定レベルに達した後、そこからの成長が難しくなる時期と重なります。
ただし、キャリアプラトーは30代でも起こることがあるため注意が必要です。20代における必死な状態から少し抜け出し、余裕が出てきて周りが見えるようになった際、キャリアについて悩み始めることで、キャリアプラトーと同じ状態に陥ることがあります 。
以下記事では、30代のキャリアの悩みと具体的な対策はこちらで詳しく紹介しています。キャリアに悩んでいて、その対策方法を知りたい方は、ぜひご覧ください。
日本は特有のキャリアプラトー問題がある
日本におけるキャリアプラトーには、日本独自の社会背景が関係しています。
日本はバブル期以降、経済の低成長に見舞われたままであり、これは若い世代のキャリアアップを大きく阻害する結果となっています。加えて、団塊の世代が管理職を占めた状況が長く続いてきたため、慢性的な空きポスト不足が発生し、キャリアの成長阻害に拍車がかかっているのです。
また日本社会においては、「何をするか」よりも「どのようなポストに就いているか」が重視される傾向があり、このような文化が、キャリアの停滞が起こった際の個人の悩みを深める一因となっている側面があります。
一方で、近年では若者を中心として、組織に属することを重視する従来の伝統的なキャリア志向から、脱却する流れも見られています。旧来の組織という枠組みだけにとらわれず、自身の経験やスキルをベースとして、時には価値観やプライベートなども含め、垣根にとらわれない自由なキャリア志向を主体とする、バウンダリレスキャリアという概念が若い世代を中心に浸透しつつあります。
キャリアプラトーが引き起こす心理的な影響とは
キャリアプラトーによる行き詰まりの状態は、昇進やスキルアップに対するモチベーションの低下、また成長実感の無い状態が長く続くことにより、自信喪失ももたらします。さらにキャリアプラトーは、仕事だけでなく、プライベートにも影響を及ぼし、さまざまなことに対する意欲や充実感の低下を引き起こすことがあります。
キャリアプラトーが起こる原因には2つのパターンが存在する!
キャリアプラトーには、大きく分けて階層プラトーと内容プラトーの2つが存在します。
階層プラトーは昇進に関わる外的な問題が主な原因となり起こります。一方の内容プラトーは、自身の内面や実際に関わっている業務といった内的な問題が主な原因となり起こります。
キャリアプラトーが起こる原因については、この2つのプラトーに分けて、次から詳しくご紹介していきます。
階層プラトーが起こる原因は?
外的な要因が主となる階層プラトーは、管理者ポストの不足や新しいポストの増加、日本特有の問題が原因となって起こります。
管理者ポストの不足
管理者ポストの不足は、階層プラトーの主な原因として知られています。
企業のポスト自体、通常は上に行くほど用意されている席は少なくなるため、上に行くほど昇進が難しくなるのは自然なことです。このため、多くの社員はトップまで上り詰めることなく途中でキャリアが頭打ちになり、それ以上の昇進は望めない階層プラトーに陥ります。これはある意味、自然な現象とも言えるでしょう。
しかし、何らかの原因で上のポストの回転が悪くなると、階層プラトーの悪化を招きます。たとえば、団塊の世代が上の重要ポストを占めてしまい、下にそのポストが回らなくなることは、その典型的な例と言えるでしょう。
昇進ルートとは異なるポストの増加
近年では、昇進に関わるルート以外でのポストが用意されることも増えており、このことが階層プラトーを引き起こす原因になることがあります。たとえば、専門分野でのスペシャリストとしての役職や、プロジェクトマネージャーなどがそれに当たります。
このようなポストは組織内における昇進経路が不明確になりやすいため、その後のキャリアアップの道が描けず、キャリアプラトーに陥ってしまう原因となります。
日本社会特有の問題
先に挙げた団塊の世代によるポスト独占や、長引く日本経済の低成長という背景も、外的な要因として階層プラトーを引き起こす原因となります 。
階層プラトーにより、想定していたキャリアプランが崩れた場合には、キャリアプランを見直しする必要が出てきます。キャリアプランの見直し方法について、詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
内容プラトーが起こる原因は?
内容プラトーは、業務のマンネリ化や忙しすぎること、ワークライフバランスの問題や同期との差といった内的な問題が主な原因となり起こります。
業務のマンネリ化
同じ部署で同じような業務を長期間続けることは、業務内容に対するマンネリ感や、成長実感の乏しさを招き、仕事に対する意欲の低下につながります。
また心地よい場所に長く居続けると、その状況に満足しきってしまい、仕事内容の変化や昇進を避けるようになってしまうことで、プラトー状態を引き起こす場合もあります。
過度な忙しさ
現在の仕事の量や難易度が、本人のキャパシティを越えてしまっている場合、昇進をするとさらに忙しくなり、さらに追い込まれてしまうのではないかという不安から、昇進を避ける場合があります。
とくにミドル世代においては、次の昇進で重要なポストを任される場合も多いため、過度な忙しさへの忌避感から、昇進をためらう人も増えやすいです。
達成感の後の空しさ
何か目標を達成して、ある程度の業務をやりきったという感覚が生まれると、それ以上の成果を追求するモチベーションの低下を招くことがあります。
とくに若い頃にがむしゃらに行動してきた人が、ある時点で立ち止まり、達成感と共にその場にいる意味を見失ってしまうと、行き詰まりを感じ、キャリアプラトー状態に陥ってしまうことがあります。
ワークライフバランスとの葛藤
昇進すると仕事の責任が増え、求められる難易度も高くなります。また、部下ができるとその教育などの対応に追われる時間も増えるでしょう。結果として、残業や付き合いによってプライベートの時間が削られてしまう場合があります。
人よっては、家庭や自由な時間を大事にするために、あえて上の職に就かないという選択肢をする人もいます。その場合、組織内でのキャリアの停滞を招くと共に、組織内での立場が悪くなる場合もあるため、キャリアの成長に大きな陰を落としてしまうかもしれません。
周りとの差
同期との出世の差、とくに自分だけが置いていかれてしまっていると感じる人は、キャリアの成長を諦めてしまう場合があります。
転職によって再起を図る人もいますが、居心地の悪いまま定年まで勤める人も多いため、このような人たちはキャリアプラトーの居心地の悪さを抱えたまま、定年をじっと待たなければならなくなり、キャリアプラトーの長期化を招くことがあります 。
内容プラトーに陥り、キャリアに行き詰まり感が出てくると、その後の仕事や生活にも様々な影響が出てきてしまいます。キャリアの行き詰まりを強く感じている人は、次の記事も参考にしてみてください。
より危険なダブルプラトー状態とは?
ダブルプラトー状態とは、先ほど紹介した階層プラトーと内容プラトーが同時に起こる状態を指します。
たとえば、望んだような昇進の機会に恵まれないために(階層プラトー)、徐々に仕事に対するやる気を失ってしまう(内容プラトー)。
逆に、仕事に対する意欲を失ってしまったために(内容プラトー)、出世街道から外れてしまう(階層プラトー)といった、逆のパターンによってもダブルプラトーに陥る場合もあります。
ダブルプラトーはどちらか一方のプラトーが起こる状況より深刻な自体を招きやすいため、より注意が必要となります 。
キャリアプラトーが起こりやすい業種、なりやすい人は?
キャリアプラトーが特別起こりやすい業種というのは特には存在していません。むしろキャリアプラトーは、業界や職種に関係なく、どのような人でも陥る可能性があります。
一方、キャリアプラトーに陥りやすい人には、傾向があることが知られています。
意外かもしれませんが、意欲的で理想の高い人はキャリアプラトーに陥りやすいと言われています。このような人たちは高い目標を設定し、その目標を達成するために、時には人一倍熱心に努力を続ける傾向があります。
しかし、掲げた目標が達成できず、自分が理想の状態に到達できなかったときには、その熱心さが逆に当人を苦しめることとなります。やがてモチベーションの低下や自信喪失を招き、キャリアプラトーに陥ってしまうことがあります。
また、マイナス思考な人もキャリアプラトーに陥りやすいと言われています。マイナス思考の人は普段から昇進に消極的な人も多く、また業務に対する積極性が乏しい人も少なくありません。そのため組織内で浮いた状態になりやすく、キャリアが成長することなくプラトー状態に陥りやすい人も多いです。
20代後半から30代付近の人は、この時期特有の人生に悩みやすいクォーターライフクライシスが、キャリアプラトーの発生に関係している場合もありますので、次の記事を参考にしてみてください。
キャリアプラトーを放っておくとどうなるのか?
キャリアプラトーを放っておくと、当の本人だけでなく、組織にとっても大きなマイナスの影響をもたらします。
キャリアプラトーに陥った人は、自己のキャリアを成長させる機会やスキルアップの機会を奪われることになります。仕事に対するモチベーションを失い、ルーチンワークばかりで消極的な姿勢が目立つと、最悪、組織内での居場所を失うことにもつながります。
さらにキャリアプラトーに陥った人をそのままにしておくと、転職や退職といった結果を招くことになり、時にそれは優秀な人材を失うことにもつながり、会社にとっての損失につながることもあります。
キャリアプラトー対策はどうすれば良い?2つの側面から対策が必要です!
キャリアプラトーの問題は、組織の構造的な問題も大きく影響する問題であるため、単なる個人の問題として片付けるのではなく、個人と組織2つの側面からの対策が必要になります。
ここではまず個人ができる対策を紹介し、その後に会社が行うべき対策もご紹介します。
個人ができる4つのキャリアプラトー対策
キャリアプラトーに陥った場合、個人でもできる対策があります。以下の4つは、キャリアプラトーから抜け出すために役立つ対策ですので、実践できそうなところから取り組んでみてください。
問題を明確にする
キャリアプラトーに適切に対処するためには、何がキャリアプラトーを引き起こしているのかを的確に把握することが重要です。現在の仕事内容、キャリアの進むべき方向性、職場環境など、問題を明確にすることで、具体的な対策を立てる準備をしましょう。
自分の希望を明らかにする
キャリアを積み重ねる上で、これは譲れないと思えるような大切な価値観や欲求のことをキャリアアンカーと呼びます。
自分が仕事や人生に対して何を求めているのか、重視することは何か、キャリアに対してどのような未来を望んでいるのかといったキャリアアンカーを明確にすることは、キャリアプラトー対策の方向性を決める上で重要な役割を果たします。
相談する
悩みを抱えている場合は、自分だけで考えても堂々巡りになってしまいがちです。キャリアに関することで悩んでいるなら、信頼できる上司や先輩社員に早めに相談してみましょう。自分とは異なる視点からのアドバイスは、自分では気づけなかった解決策を見つけるのに役立つでしょう。
また、プロのキャリアコンサルタントへの相談もオススメです。専門家として的確なアドバイスは、キャリアプラトーからの脱却を早めてくれるでしょう。
キャリアを再考する
現在のキャリアに対する向き合い方を変えることも有効な対策となります。
最近では、昇進や所属する企業にこだわらない働き方を選択する人が増えています。この記事でも触れているバウンダリレスキャリアは、企業という枠組みにとらわれず、ときには転職も行いながら、自分の理想にあったキャリアを形成する考え方ですが、この考え方に沿ったキャリアの考え方をする人が若い人を中心に増えています。
一方、もう少しコンパクトな考え方として、プロティアンキャリアという考え方もあります。これは、企業のためではなく、個人が自己の心理的な満足や成功を達成するために、キャリアを成長させていく考え方になります。バウンダリレスキャリアは企業を超えた話が含まれますが、プロティアンキャリアは企業内でも可能なレベルの話という点で少し違いがあります。
最近では本業以外で活躍する、パラレルキャリアという働き方も注目されています。パラレルキャリアは副業と混同されることもありますが、副業は主に副収入を目的とするのに対し、パラレルキャリアは、自身の成長に主眼を置く点において違いがあるとされています 。
副業を考えている人は、こちらで30代男性向きの副業をご紹介しています。
いろいろ考えた結果、転職という選択をすることももちろん対策の1つとなります。その場合には、急いで転職するのではなく、しっかりとキャリアプランを立ててから行動するようにしましょう。
30代で転職を行う場合には、以下の記事に成功のポイントを紹介していますのでチェックしてみてください。
企業が行うべき5つのキャリアプラトー対策
ここで紹介する対策は個人で出来る対策ではなく、企業側が行うべき対策です。
しかし、企業側がキャリアプラトーに対してとるべき対策を知っておくことは、いまの企業がどれだけキャリアプラトー対策に熱心に取り組んでいるかを知る機会にもなり、今後の行動を考える良い判断材料となります。
次から紹介する企業がとるべきキャリアプラトー対策をしっかりとチェックしておき、今後の行動をとる際の備えとしておきましょう。
ヒアリング体制の充実
従業員と企業側が密なコミュニケーションを行えるヒアリング体制を充実させることは、キャリアプラトー対策として重要です。上司と部下で定期的なミーティングの機会を持ったり、アンケートを通じて従業員の意見を聞くなどを行い、希望や問題点を早期に把握し、適切な対応を講じておくことはキャリアプラトー発生の予防にもつながる有効な対策となります。
人事制度の見直し
階層プラトーによるキャリアのつまりを減らすため、人事制度を改善することもキャリアプラトー対策として役立ちます。
近年注目されている複線型人事制度は、昇進だけでなく、スキルや専門知識に基づいた評価と専門のポストを提供することで、従業員のモチベーションを維持することに役立ちます。
人事の流動性を上げる
職場における流動性の低下はキャリアプラトーを招く原因となるため、人事の流動性を上げることはキャリアプラトー対策に役立ちます。
具体的には配置換えや、担当する仕事、顧客の変更は、新たなキャリアの刺激を生み出し、マンネリ化によるモチベーションの低下の改善に役立ちます。
ただし、本人の意向にそぐわない変化の場合は、かえってキャリアプラトーを発生させる原因となるため、しっかりとした事前のヒアリングや相談を行うことが、トラブルを未然に防ぐために重要です。
チャレンジ環境を整える
企業が社員に挑戦しやすい環境を整えることも、キャリアプラトー対策として重要です。
従業員が新たなスキルアップや知識の習得に挑戦しやすいよう、社内の制度を整えたり、ときには予算を割り当てることも、チャレンジを促進することに重要です。
また、社内においてチャレンジすることを奨励したり、失敗を受け止める文化を整えることも、チャレンジ環境を整えることに役立ちます。
後輩の指導を任せる
キャリアの成長が止まり、やりがいを見失った中堅の社員に対しては、その知識と経験を生かし、後輩の育成を任せると、やりがいを取り戻すことにつながることがあります。
後輩の指導を任せることで、上司と部下の関係が深くなり、より強固なチームワークで業務に当たることができたり、指導の立場に立った上司自体も、後輩の指導により自信を取り戻すきっかけになる効果が期待できます。
まとめ
キャリアにおける成長が停滞するキャリアプラトーは、仕事に対するモチベーションが低下したり、自信の喪失を招くことで問題が長期化しやすいため、放置しておいて好転するような問題ではありません。問題を放置したままだと、むしろ社内での立場が悪くなったり、ますますやる気を失ってしまうなどの悪循環を引き起こす恐れがあります。
キャリアプラトーの原因には、本人の問題のほかに、外的要因となる企業側の問題も大きく影響するため、個人でできる対策だけでなく、企業側にもしっかりとした対策が求められます。キャリアプラトーへの対策に消極的な企業であった場合には、転職を考えるのもやむを得ない場合もあるでしょう。
近年では1つの職場、働き方にこだわらないキャリア形成も徐々に浸透しつつあります。キャリアの停滞を感じたら、まずは落ち着いて問題にゆっくりと向き合い、今後の対応を考えていきましょう。